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「あ、お母さん。起きた?」
母のベッドの足元で洗濯物を畳んでいると、ゆっくりと瞬きを繰り返す母に気づく。
「あぁ…紗栄子…どれくらい寝てたかしら?」
「2時間ちょっとだね。お腹すいたんじゃない?」
「…喉が渇いてる…気がするわね」
「うん。少しベッドを起こすよ」
母が常温の麦茶の入ったコップを両手でしっかり持つのを見てから
「温かいお茶も飲む?」
と聞いてみる。
「ありがとう。でもスイカは、まだある?あったら食べたいわ」
「あるよ」
喉が渇いてるらしい母は、今度はしっかりと自分でフォークを持ってスイカを食べる。
「美味しい」
「良かった」
「メロンも食べてしまいそう」
「いいよ、食べて」
「柔らかくて甘くて美味しい…紗栄子も私と一緒で果物が好きよね」
「うん、大好き」
メロンなんて、お母さんのところに持って来る日にしか食べたことないけれどね。
それから数日後、もう家には居られないと思うような出来事が起こるとは知らずに、私は母が元気を回復したと安堵していた。
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