part 1

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支えられていたまま横向きに抱き上げられたことにも、周りに何人もの人がいたことにも、彼らの返事が聞き慣れない感じだったことにも驚いたが、彼らの動きは実に迅速で 「…あの…どこへ?」 と私が口を開いたのは動き始めた車内でだった。移動する、から1分もかからないうちにすでに車が動いてる。どうなっているのだろうか? 「懇意にしている警察じゃないと面倒だから移動する」 警察と懇意とか懇意じゃないとかって何だろう。 私は横抱きにされたままの体を起こそうとして 「……」 一瞬、腰の辺りに違和感を覚えて動きがスムーズで無くなると、そっと無言で横抱きに戻された。 「心配しなくても場所がここだから大丈夫な警察だろうが」 「一応数人残して様子見させています」 「ん」 助手席からの声に‘ん’と答えた声にやはり聞き覚えがある気もするけれど、記憶が定かではない。 「治療する。電車に乗るつもりだったのか?」 ここで初めてはっきりとバリトンの主を見た…正確には見上げた。
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