part 1

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そっと寝かされた…寝かされる?ベッド?違う…こっちに見えるのは背もたれだからソファー?膝から下をもぞもぞと動かして足元を探るけれど何にも当たらない。 頭の方が一瞬僅かに沈んだことで藤堂さんが座るスペースがまだあることに驚いて、少し頭を上げてキョロキョロっとするとコの字型の超大型ソファーの真ん中に自分が寝かされていることが分かる。ホテルのラウンジみたいだ…と…ぇ? 「ん?」 「……」 「こうだろ?」 私が上げていた頭の下に自分のモモを差し込んだ藤堂さんが囁くように声を出す。私は膝枕を要求してはいない。彼の小さな声にはやはり聞き覚えがあるように思うけど… 「あの…どこかで会ったことがありますか?」 「そう思うのか?」 藤堂さんが不思議そうにもせず淡々と私に聞き返した時、福嶋兄弟が入って来るのと私の小さなバッグの中から着信音が聞こえるのは同時だった。 バッグは最初に福嶋さんが持っていてくれてローテーブルに置かれている。藤堂さんが私の顔に覆い被さり手を伸ばしてバッグを掴むと、私のお腹の上に置いてから私の上体を起こして…背もたれがあるのに何故か自分にもたれさせる。私が背もたれへ体をずらそうとすると 「早く出ないと切れる」 私の体を支えながらクイッと顎でバッグを指した。これだけ長く呼び出し続けるのは夫に違いない。
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