侍女ハルラールはセコムと結婚したい

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 私は床に落ちたものも含めて全部ゴミ袋に詰めていきます。こんな物、サヴィトリ様が目を通すまでもありません。  未婚の王の元には毎日こういった身上書が嫌というほど届きます。サヴィトリ様と婚姻すれば自動的にクベラの王になれますからね、ワンチャン一発逆転を狙う者の多いこと多いこと。 「それで、ハルはどうして急にそんなことを言い出したの。ええと、せこむ、だっけ?」  サヴィトリ様は冊子をゴミ袋に投げ入れながらお尋ねになりました。  私は昨晩の出来事を思い出し、無意識のうちに冊子をねじり切ってしまいました。  端的に言ってしまえば、デート帰りに魔物に襲われ、相手の男性に置き去りにされたというだけのことです。  早い段階で相手が屑だと見極められてよかったです、ええ。ちょっと金払いと顔が良いからと軽率にデートに行った私が悪いのです、ええ。 「……ハル、全部声に出てる」  ……最近このようなことばかり続いている気がします。元々サヴィトリ様にお話を聞いてもらうつもりだったからいいんですけどね。 「そんなことより魔物に襲われたって、大丈夫なのか? 怪我はなかった?」  サヴィトリ様は私の手を取り、心配そうに顔を覗きこんでくださいました。  こういうところがサヴィトリ様の良いところでもあり、性質の悪いところでもあります。
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