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僕は保健室に着くなり先生を呼ぶが、先生どころか他の生徒すら誰も見当たらない。
とりあえず成瀬くんをベッドに寝かせる。保健の先生はベータであることを公表していたはずだけど、他にどの先生を呼んでくるべきなんだろうか。
「倉木、そこの棚に抑制剤入ってたはずだから取ってほしい……」
「わ、わかった」
僕は保健室の棚を漁って抑制剤を見つけ出した。こういうものも常備してあるんだ。
なんて感心している場合じゃない。僕は一刻も早く成瀬くんから離れなければいけない。そろそろ、本当に、ヤバい。
「倉木……?」
「……っ、これ」
ヤバい。
僕は成瀬くんに抑制剤を手渡す。彼は錠剤をすぐに噛み砕いて飲み込んだ。
「ご、ごめん僕一旦外に出……」
「あ、待って」
ガラリ、と扉を開けた瞬間、そこにはどこの学年とも分からぬ生徒たちが、こちらを欲に濡れた目で覗き込んでいた。
「なんでこの学校にオメガが……」
一人の男子生徒が保健室に足を踏み入れる。
「っ、出ていって!」
僕は彼をありったけの力で押し返すと、扉を閉めてガチャリと鍵を下ろした。
「はーっ、はーっ」
ずるりと扉の前に座り込んだ。荒くなった呼吸はもう隠しきれない。
成瀬くんを一人にしちゃいけない。でも一緒にいるのが僕じゃダメだ。
「倉木」
後ろから成瀬くんが呼んでいる。
「成瀬くん……。こっち来ちゃダメだよ」
「…………」
「僕アルファだから。ごめん、騙してたつもりはなくて。でももう、頭がボーッとしてる。君に何するかわかんない。だから、せめて離れてて」
ふと頭を上げると、すぐそこに彼の身体があった。
「成瀬くん! 僕に近づいちゃダメだってば! ……っもう、ほんとは触れたくて触れたくて、だからほんとに、離れて」
「……倉木、ごめん。気づかなくて、ごめん」
そう言うと彼は、僕を背中から抱き締めた。
「倉木はちゃんと俺の言葉聞いてから二次性判断してくれたのに、俺、そんなこと一度もしようとしなかった。俺ばっか倉木に助けられて、それなのに俺、倉木のことずっと─」
「違う! 成瀬くんは何も悪くない!」
「もういいよ倉木。俺はお前が思うほどできた人間じゃないよ。それに俺も、倉木に、触れてほしい」
「……っ」
唇に熱いものが触れる。
カッと身体全体が沸騰したみたいに熱を帯びる。
「なる、せ……く……んむっ」
再び唇が重ねられた。口内に舌が入ってくる。その熱い舌を追いかけて、必死に絡めとる。
熱い。熱くてどうにかなりそうだ。頭がクラクラしてくる。
理性なんてとうに吹き飛んでしまって、気がつくと僕は、彼を保健室の真っ白なベッドの上に押し倒していた。
僕は成瀬くんの制服のボタンを外そうとした。けれど気が急いて全然上手くいかない。
彼は僕の手を持ち上げると、自らボタンを外してくれた。
「倉木」
成瀬くんの手が僕の頭に回って、僕を自分の方まで引き寄せた。
再び唇を重ねる。いやらしい水音が脳内に直に響いている。視界がぐらぐらと歪む。僕は制服の隙間から彼の身体に触れた。
熱い。今はおそらくお互いに発熱しているので、もうどっちがどっちの熱かなんて分からない。けれどとにかく熱くて熱くて、のぼせ上がったみたいに頭がクラクラしてくる。
指が胸の突起を掠めると、成瀬くんは息を詰めて身体を震わせた。
彼は腕で顔全体を覆っているから、その表情まではわからない。僕は顔を見たいけど、彼はそうじゃないかもしれない。
というか、声出せないもんね。ここ保健室だもんね。
意識した瞬間にまた身体が沸騰したみたいに熱くなって、今度は舌で胸の突起を舐め上げた。
「……っ!」
今度はビクビクと身体全体を震わせる。
ヒートで感じやすくなってるだけだとわかっていても、こうやって反応をくれるのはたまらなく嬉しい。
僕は胸に舌を這わせつつ、右手で彼の昂りを撫でた。
彼の左手が僕の右手に伸びる。その手を制して強く擦ると、彼は喉の奥からくぐもった声を出して一際大きく全身を震わせた。
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