逢瀬の終

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逢瀬の終

 暗い部屋の中で、甘い吐息(といき)が響く。  カーテン越しに差し込む月明かりの下で、白く(なま)めかしいしなやかな身体がピクピクと小刻みに動く。 「はぁ…ごめん…私が先にイっちゃった…。京くんは…まだ…だよね?」  彼女の身体の痙攣(けいれん)が収まる頃に、俺はそっと彼女から離れてた。  その俺の様子を見て、彼女が心配そうな口調でそう言った。  俺が最後まで達しなかったことに、不安を感じたのだろう。 「ん…大丈夫。別に俺はイかなくても平気だよ。」  サイドテーブルに置かれていた、温くなったミネラルウォーターを流し込みながら彼女に応える。彼女が不安にならないように、微笑みを浮かべる。 「ね…京くんは、終わりにしたい?」  不意に投げかけられた言葉が、俺の胸を刺す。  何故そんな事を言う?と彼女の方に視線を向ける。  彼女は美しく、そして淋しそうに俺を見て微笑んでいた。 「最近、ぜんぜんイけてないでしょう…私の抱き方も変わった。」  ゆっくりと上体を持ち上げて、少し気だるそうに髪をかきあげると彼女。  そういう仕草がとても色気が有って、俺は好きだった。 「だって…俺たち体だけ…でしょ。俺にはもう、無理かなって…。」 「京くん…心も欲しい人なんだ…。」  少し小馬鹿にしたような、どこか悲しそうな笑みを浮かべ彼女は言う。 「ごめん…好きだから抱きたいんだ。抱いたらより触れたくなる。全部欲しくなる。身体だけでもいいって男もいるだろうけど、俺には無理…。」  俺は床に脱ぎ捨てたままになっていたシャツを羽織りながら言う。  好きだけど、交われないから、別れるしかない…  悩んだ末に俺が導き出した結論。 「そっ…か。どっちかが恋愛感情を持ったら終わりって約束だもんね…。」 「だから…これで終わりにしましょう…。」  最後の抱擁も、お別れのキスも、サヨナラの言葉もない別れ  俺たちは一度も視線を交わすこともなかった。  俺はゆっくりと部屋を出た…。
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