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第6話
俺をやる宣言されて舞い上がったハイファだが、じつはそれまでの親友という関係にプラスして、たまに行為が加わるくらいかと思っていた。
口は悪いしロマンティックという言葉からかけ離れて現実を生きるタイプの人間、それが若宮志度という男だったからだ。
それが二人きりだと予想を嬉しく裏切ってシドは非常に甘く、日頃からこうしてちゃんと恋人扱いしてくれる。甘々すぎて驚いたほどだが、職場の機捜課でこの自分との仲を未だに頑強に否定している贖罪のつもりもあるのかも知れない。
食事を終えてハイファがリフレッシャを浴びて戻るとコーヒータイムだ。
キッチンと続き間のリビングで独り掛けソファがシド、ロウテーブルを挟んだ二人掛けソファがハイファの定位置である。
視るともなく点けたホロTVではニュースが流れていて、話題は勿論今日のタイタン・ハブ宙港の二件の爆破ばかりで持ちきり、何処の局も同じネタだった。こうなると本当に風向きでの飛び火が危ないと思わせられる。
だが各局でナントカ評論家がもてはやされているのを眺め、シドは暢気に言った。
「俺も歳食ってリタイアしたらアナリストになるかな」
「充分、犯罪アナリストの資格は持ってるよね。それも目の前でのストライク、実演付きなんだから。引く手あまたの犯罪対処アナリスト。好かれるのか嫌われるのか」
「知るか阿呆。けど実際、俺っていつまでこんな風なんだろうな。ジジイになって体力持ってかれてもこれだとキツいような気がするんだが」
と、シドは紫煙混じりの溜息をつく。
「サイキ持ちのサイキって、体力消耗しすぎると使えなくなったりするらしいよ」
「へえ。でも俺はサイキ持ちじゃねぇからな、体力と同時にぶち当たる事件も目減りするなら大歓迎なんだが。つーか、このままじゃマジで保たねぇって」
「大丈夫だよ、完全にサイキ持ちの範疇だから。治療には自覚することが第一歩、本当に一度、軍のラボでサイキチェック受けて……あ、新しいニュースだ」
独特の緊張感を誘う音で二人は画面を注視する。
《荷物検査のX‐RAYの際に、そのX線に反応し起爆する爆薬が使用された可能性が高く》
などと評論家が論じている上にテロップが流れた。
《太陽系広域惑星警察タイタン地方一分署が爆破され、多数の死傷者が出た模様》
次には亜空間レピータを使用したダイレクトワープ通信での映像が入る。
爆破されたという惑星警察タイタン地方一分署をBELから俯瞰したカメラでの映像にまともな建築物は映っていなかった。暗い中、ただの瓦礫の山が広がっている。ところどころにオレンジ色の炎があり爆破されて幾らも経っていないことが伺えた。
救助・捜索作業に当たる人員がポツポツと映るも、手を付けられない状態らしい。
「何だこれ、どれだけ高性能の爆弾だよ?」
唖然とした口調で呟いたシドにハイファが小声で注釈を入れた。
「ええと、タイタン一分署は単独建築物で五階建てだったみたい」
素早くリモータで別室基礎資料を検索して読み上げ、更に資料を深掘りする。
「宙港警備は基本的に入星管理局警備部の管轄、向こうの惑星警察は主に宙港勤務者の居住区やホテルに歓楽街近辺の事件・事故を扱ってるんだってサ」
「ポリアカ行ってりゃ、それくらいは知ってるさ」
「そっか。ターゲットにするには身近なだけに効果的かもね」
TVでは更に宙港爆破を受けて惑星警察も厳重警戒態勢を取っていたこと、そのために定時を過ぎても大勢の人員が署内には詰めており、被害が拡大したことなどを告げていた。
「これで生き残ってる奴なんか……チクショウ!」
自分たちと同じ広域惑星警察に対しての攻撃に、普段はポーカーフェイスのシドが滅多に見せない本気の怒りを露わにしている。
そんなシドの煌めく切れ長の黒い目を、ハイファは黙って見つめていた。
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