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起きろ。
そんな声が聞こえた気がした。
目を開くと、明るい曇り空から灰色の雪が舞い落ちている。
誰もいない。ただ鴉が一羽いるきりだ。
寒い。雪原の中に倒れていた。
体は半ば、雪に埋もれていた。
よくもまあ、生きている。
雪の中をさぐり、短剣をつかみだす。刃も柄も、べったりと血で汚れている。
それを見てようやく、何があったのか思い出した。
「どうやら、ちゃんと目が覚めたようだな」
呆れた。
喋ったのは鴉だ。
「なぜ鴉が口をきいている?」
「これは私の使い魔だ。私はこの国の様子を鴉の眼を通して観察している」
「魔導士か」
「そのようなものだ」
「俺は、死んだのではなかったか」
「死んださ」
「いや、生きているぞ」
「不死病だよ。この国で静かに死んでいない者は、みんなそうだ」
「不死病?」
「知らなかったか? 女王が倒れて以来、この国に蔓延した病気だ。大半の者は寒さと飢えで死んだ。不死病に感染した者のうち、二百人に一人ほどがおまえのように蘇る」
「そうか。俺たちを襲った連中も、その、不死病か」
「……連れがいたのか?」
「若い女だ。見なかったか?」
「見ていないが、不死者の集団がどこにいるかはわかる」
「教えてくれ」
「お前たちが何者で、何のためにどこを目指していたのか知りたい」
「歩きながら話す。まず、教えろ」
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