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半ば雪に埋もれた廃村に、敵集団はいた。
少女がそこにいてまだ生きていることも、鴉が上空から確認していた。
トマスは廃村から少し離れた樹林に隠れ、短剣の血をぬぐっていた。
「少女と旅を初めて七日目の夜、寝込みを襲われた。不甲斐ない話さ」
「おまえが何者なのか、まだ聞いていないな」
「魔術師さ」
「そうは見えんが」
「人々はそう信じた。俺の国では魔術を使うことは大罪でな、その疑いで俺は国を追放された。特に何もしていないのだが、妻子も殺された。魔術にかかわりのあるものなど、この短剣だけなのだがな」
「大罪と知っていて、なぜ魔術を使った?」
「戦争だった。街は包囲されていて、味方の軍勢からは切り離されていた。俺は短剣の力を解き放って敵を打ち破ったのだがな、結局戦争には負けて、数年後にその罪で裁かれた。占領軍に尻尾を振るクソどものためにな」
「その短剣、よく見せてくれないか」
「その必要はない。今から使って見せる」
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