9人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
昼食が済み、ジュリアスはモーガンと共に、子供の様な小柄な東の軍人に連れられて再び会議室へ向かった。
「全員が到着するまでここでお待ちください」
午前中の会議室には軍の人間が沢山いたが、今はジュリアスとモーガンと小柄な軍人だけだった。
「エスはどうだったんでしょうか」
軍人が隣の部屋に移ると、モーガンが心配そうにジュリアスに小声で尋ねる。
「エスの到着を東の軍は待っているのかもな。どちらにしても、僕達は捕虜にされるだろう」
「エスが約束を反故にすると?」
ジュリアスは頷く。
「エスは東の人間だ。賭けなんて言っていたが、僕達を騙すなんて簡単だろう」
「俺も舐められたもんだなぁ」
ジュリアスとモーガンを会議室に連れて来た軍人が、隣の部屋から戻り帽子を外してジュリアスに言い放つと、ジュリアスとモーガンは驚いてその軍人、エスを見た。
「エス!声が全く違うから気が付かなかった」
ジュリアスは思わずエスの名前を叫んだ。
声色を変えることなど、エスには簡単な事だった。
「シッ!賭けはあんたの勝ちだ。俺の体は結局女のままだったよ。急いでこれに着替えろ」
隣の部屋から持って来た東の軍服を、エスはジュリアスとモーガンに渡した。
「これも飲め」
茶色の小瓶に入った薬をエスは2錠手のひらに出すと、ジュリアスとモーガンに差し出す。
「待ってくれ。僕は明日の朝まで男には戻れない」
「やっぱりそうか。元の姿に戻らねーと薬も効かないってことか」
ジュリアスは頷く。
「とりあえずモーガンだけでも飲んでおけ。何かあった時に時間稼ぎになる」
モーガンはジュリアスを見る。
「もし、私もエスの様に元に戻らなかったら、絶対元に戻す薬を作ってくださいよ」
泣きそうな顔でモーガンは薬を口に入れた。
「分かってるよ。約束だ。僕の頭脳を信じろ」
最初のコメントを投稿しよう!