9人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
ショーの始まり
「予約したマディ・メイソンよ」
車の中でタイトスカートのスーツに着替えたエスは、フロントでスマホの予約ページを見せて偽名を名乗った。
ホテルのフロントは、パソコンでマディ・メイソンの名前を検索して本人確認をするとカードキーを渡す。
博士の為に、もちろんホテル側はセキュリティが万全で、至る所に東西のSPが配置されていた。
もちろんエスは東のSPには顔パスである。
ベルボーイがエスの荷物を持ち、エスを先にエレベーターに乗せ、2人を乗せたエレベーターはエグゼクティブフロアで止まった。
「こちらになります」
エスの泊まる部屋にエスとベルボーイが入る。
「……本当にエス?今回の変装は完璧すぎです。そんな薬があるなんて本当に信じられない」
話しかけたベルボーイはエスの仲間で、この計画が決まって直ぐにこのホテルに潜伏していた。
「俺も驚いたが本当に俺だよ」
ベルボーイはまだ疑ったままエスを見つめる。
エス自身もまだ信じられない感覚があるが、本当に完璧にオンナになっていた事でとりあえずはホッとした。
元々小柄のエスにとっては、女性的な丸みを帯びた体になっただけで、特に違和感はなかった。
1番の変化は声だった。
わざと声色を変える必要がない。
「そんなに疑うならお前も飲んでみるか?」
エスがベルボーイに茶色の小瓶を投げた。
ベルボーイは受け取ると、ジッと小瓶を見つめる。
「怪しさ満点。良く飲みましたね」
少しだけ呆れながらベルボーイはエスに小瓶を投げ返した。
「これも仕事さ。まあ、明日の今頃には男に戻っているさ。それよりターゲットは?」
「本日は核開発推進会議に参加しています。最上階のレストランに19時30分に予約が入ってます。もちろん、直ぐ隣のテーブルの予約は取れてます」
「了解。全く、女の姿で女にハニトラを仕掛けるのは初めてだぜ」
最初のコメントを投稿しよう!