ショーの始まり

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ショーの始まり

「予約したマディ・メイソンよ」 車の中でタイトスカートのスーツに着替えたエスは、フロントでスマホの予約ページを見せて偽名を名乗った。 ホテルのフロントは、パソコンでマディ・メイソンの名前を検索して本人確認をするとカードキーを渡す。 博士の為に、もちろんホテル側はセキュリティが万全で、至る所に東西のSPが配置されていた。 もちろんエスは東のSPには顔パスである。 ベルボーイがエスの荷物を持ち、エスを先にエレベーターに乗せ、2人を乗せたエレベーターはエグゼクティブフロアで止まった。 「こちらになります」 エスの泊まる部屋にエスとベルボーイが入る。 「……本当にエス?今回の変装は完璧すぎです。そんな薬があるなんて本当に信じられない」 話しかけたベルボーイはエスの仲間で、この計画が決まって直ぐにこのホテルに潜伏していた。 「俺も驚いたが本当に俺だよ」 ベルボーイはまだ疑ったままエスを見つめる。 エス自身もまだ信じられない感覚があるが、本当に完璧にオンナになっていた事でとりあえずはホッとした。 元々小柄のエスにとっては、女性的な丸みを帯びた体になっただけで、特に違和感はなかった。 1番の変化は声だった。 わざと声色を変える必要がない。 「そんなに疑うならお前も飲んでみるか?」 エスがベルボーイに茶色の小瓶を投げた。 ベルボーイは受け取ると、ジッと小瓶を見つめる。 「怪しさ満点。良く飲みましたね」 少しだけ呆れながらベルボーイはエスに小瓶を投げ返した。 「これも仕事さ。まあ、明日の今頃には男に戻っているさ。それよりターゲットは?」 「本日は核開発推進会議に参加しています。最上階のレストランに19時30分に予約が入ってます。もちろん、直ぐ隣のテーブルの予約は取れてます」 「了解。全く、女の姿で女にハニトラを仕掛けるのは初めてだぜ」
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