ショーの始まり

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19時25分にエスはレストランに到着した。 もちろんセキュリティチェックも行われた。 「メイソン様、こちらになります」 「ありがとう」 カクテルドレスを身に纏い、大粒のエメラルドとダイヤが輝く首飾りで着飾ったエスは、ウエイターにエスコートされて席に着いた。 「食前酒はいかがなさいますか?」 「シャンパンをお願い」 「かしこまりました」 ウエイターが離れて行くと、エスはターゲットのテーブルをチラリと見た。 まだターゲットの博士は到着していない。 そのうちシャンパンが運ばれて唇を潤わすと、博士が入ってくるのをチェックした。 来た。 予約の時間より15分程遅れて博士が到着。 ゆったり目のパンツスーツ姿だった。 ただ、若い男がエスコートしているのを見てエスは怪訝な目を向けた。 予約は1人だったから。 何者かとエスは考えるが、計画にハプニングは付きもの。エスはスッと立ち上がり、隣の席の博士に近付いた。 「お久しぶりですね、博士」 博士はエスに顔を向けた。 博士も同席の男も、大きな動揺は見せずエスを見た。 「どこかでお会いしました?」 博士はジッとエスを見つめる。 「以前のシンポジウムで少しお話しさせていただいたのですけど。マディ・メイソンです」 エスはわざと寂しげに名乗った。 もちろんそんなシンポジウムに参加などしてはいなかったが、そこは適当に話しを合わせれば済むこととエスは微笑む。 「そうでしたの?ごめんなさい。あなたほど素敵な方を忘れてしまって」 「いいえ。私なんてその他大勢の1人ですもの」 「よろしければお詫びにご一緒に食事をしませんか?ぜひその時のお話をしたいわ」 「まあ、嬉しいわ!」 あっさりとトラップに引っ掛かり、エスは少し警戒したが、本当に女性にしか興味のないレズビアンなのかと考える。 博士はニッコリ笑うとウエイターを呼んだ。 「こちらのレディの席を用意してくださる?」 直ぐにテーブルもセッティングされて、エスは博士のテーブルに着いた。
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