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エスは部屋に博士と一緒に戻り、部屋にある赤ワインのコルクを開けた。
もちろんその中には睡眠薬が仕込まれており、博士を寝かせた後に博士の部屋から機密情報を奪う計画である。
「乾杯」
グラスを重ねると、エスは飲むフリをする。
博士はコクリと喉にワインを流し込んだ。
「私ね、オリエント大学では、色々な開発に携わったのよ」
「ええ、10歳前には卒業したほどあなたは優秀なんだもの、全く驚かないわ」
エスはジッと博士を見つめる。
博士の目がトロンとするのを脳内で測っていた。
「あなたが飲んだ薬もそうよ、エス。必ず今夜中に接触してくると思ってた」
博士の言葉にエスは驚き目を見開いた。
「……なんのこと?エス?」
とりあえずしらばっくれるしかなかった。
どうせもう直ぐ博士は眠りに落ちる。
「あなたが東の利益の為に、世界中で活躍するスパイだって事はもう分かっているのよ。私から核兵器の資料を入手しようとしていることも」
なぜ全てばれているのかと、エスは少しだけ緊張してきた。
「あなたが飲んだ薬は、元は私が作ったのよ。もちろん私が作った物ならば、24時間でちゃんと元に戻るわ」
エスは流石に背中がゾクゾクしてきた。
あの薬も、やはり博士が作ったのかと。
「私が眠らなくておかしいと思ってるのね」
また図星を突かれて、流石にエスは言葉を失う。
「私の体は自身の実験のせいで、つまらない薬物には反応しない。そうそう、私の子供の時の写真は見たかしら?」
エスはコクンと頷くのが精一杯だった。
今まで失敗などした事がない。
でもこれは初めての大失敗だった。
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