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――となると、やはり目の前にいる翳白暗は閑白が作り出した偽物だろう。
「黒明! そいつもきっと、さっきの人たちと同じただの偽物だ!」
煬鳳はすぐさま動けぬ翳黒明に向かって叫ぶ。それでも大切な弟と同じ姿では、彼は躊躇うだろうが。
「偽物とは人聞きが悪い。こいつは確かに空っぽの人形だが正真正銘、こいつが殺した双子の弟さ。もっとも、損傷も激しかったんで止むを得ず手心を加えなければならなくなってな……血は根に与え、搾りカスは肥料にして新たに仙果の身体を作り出してやったんだよ!」
閑白の言葉が信じられず、煬鳳は言い返す。
「そんな、馬鹿な! だって……!」
翳冥宮の人々は、翳黒明が一人一人灰に還したと彼が言っていた。翳白暗も例外ではないはずだ。
口の端をあげて閑白は煬鳳を見た。
「あろうことか、こいつは、自分の弟だけは他の奴らと同じように灰にすることができず、結局体を残しちまったのさ! 笑っちまうよな! これ幸いと手間暇かけて元の状態に近づけたというのに……魂魄は戻せず、他人の魂魄を入れることもできない! クソッ! いちいち糸を引いてやらないと何もできない、ただのゴミだ!」
翳黒明の目が赤く輝き、閑白へ斬りかかる。しかし表情の無い顔でするりと前に進み出た翳白暗によってそれは遮られてしまった。
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