109人が本棚に入れています
本棚に追加
/1358ページ
「くそっ……! どいてくれ! 頼む! 白暗!」
それでも翳黒明はなんとか翳白暗を押しのけて閑白の元へ行こうとするのだが、立ちはだかる翳白暗を前にして、刃を向けることができない。
「どうした? 私を殺したいんじゃないのか? できないよな! だって大切な弟が前にいるんだから! 二度殺し合ったとしても、三度めはもうできないよな!」
目の前で叫んでいるのは、一体どのような魔物なのだろうか。とても昇仙したものとは思えぬ有様を目の当たりにして、恐ろしく不気味にさえ思えた。
翳黒明はすっかり閑白の言葉で怒り、我を忘れかけている。このままでは危険な状態になってしまう、煬鳳は焦った。
対峙するのは閑白と翳黒明の二人だが、弟である翳白暗がいる以上、安易に手を出すことは難しい。特に、あの記憶を見たあとでは、このまま二人を戦わせてしまったら、もういちど翳黒明は自分を見失ってしまうだろう。
「空っぽの捨て駒だがお前に対しては非常に役に立つものだなぁ、こいつは。お喋りもそろそろ飽いたことだし、ここらで決着をつけようか」
閑白は袖の中から幾枚もの紙片を取り出した。
「あっ……それは!」
凰黎が叫ぶ。間違いなくあれは、先ほど閑白が翳冥宮の人々の偽物を作り出していたものと同一のものだ。
最初のコメントを投稿しよう!