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「私は鳥になる前――邪教の術師だと言われ処刑されたことがあるんだ。羽化登仙したあとでかつての記憶を取り戻したが……人間であったときの経験がいまこうして、役に立つとはね」
閑白が呪文を唱えると、閑白と同じ姿をした分身たちが十数人ほど現れる。
「煬鳳」
凰黎が囁く。
「あの人形は、術者と同じ能力を持っています。恐らくまともに戦うのは無理でしょう」
「なら……やっぱり本体を叩くしかないのか?」
凰黎は頷く。
「ですが、相手もそれは百も承知。そう容易くはさせて貰えないでしょう。それに翳黒明の様子も心配です……」
凰黎の向けた視線の先には、防戦一方の翳黒明の姿が見える。いまは閑白のほうが遊んだ気になっているのでまだいいが、閑白が本気を出したのなら翳黒明も太刀打ちできないはずだ。
特に、翳白暗が彼の盾になっている以上、翳黒明は翳白暗を傷つけることはできない。もし、翳黒明が翳白暗に刃を向けるならば、そのときは二人で死ぬ覚悟を決めたときだ。
(そんなこと、させるものか!)
何か打開策はないものか、煬鳳は必死で先ほど見た記憶を手繰り寄せる。
「そうだ、藍方! あの箱どこにやった!?」
「あの箱?」
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