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相当な力を入れたにもかかわらず、箱からは軋む音一つ聞こえてはこない。
「くそっ、絶対にこの中にあるはずなんだ……! 開け!」
それでも諦めず、煬鳳は力を込める。それを見て彩藍方が腰に差してある道具を箱に当て「貸してみろ、俺がやる!」と煬鳳の代わりに試みた。
そうこうしている間も皆は戦っている。堪らず煬鳳は黒曜を両手で抱えて覗き込む。黒曜はいつでも来い、という顔で煬鳳を見つめていた。
「よし……! 黒曜、存分にやってやれ! でも無理はするなよ! 退けるだけでいい!」
煬鳳は黒曜にそう言って激励を飛ばす。黒曜は一声鳴くと閑白の分身目掛けて飛んで行く。始め閑白と戦ったときは全く相手にならなかった黒曜だったが、二度目ともなれば警戒も怠らない。
襲い掛かる分身たちをかく乱するようにすり抜けて、相手の油断を誘う。力と力でぶつかっても競り負けるだけ、力を使いすぎても煬鳳に負担をかけるからだろう。
(本当なら黒曜だって白暗のもとに行きたいだろうに……)
煬鳳は黒曜の心遣いを有り難く思う。
「貸してください!」
しびれを切らせた凰黎が、彩藍方から箱を奪おうとすると、黄色い影が側にやってきた。
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