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「お前ら、いい加減に……危ない!」
二人に向かって言いかけた煬鳳は途中で叫ぶ。閑白は翳白暗もろとも二人のことを刺し殺すつもりなのだ。閑白の掌中にある匕首が剣に姿を変え、背後から二人に襲い掛かる。
「いってぇ! ぐえっ」
床に転がったのは彩藍方と翳白暗だった。彩藍方は翳白暗の下敷きになり、潰れた蛙のようなうめき声をあげる。彼の上にいる翳白暗のほうは、虚空を見つめたまま何の反応も示さない。
「自分が殺したくせに、今度は弟を守ろうというのか? 健気なことだな」
彼らを突き飛ばしたのは翳黒明だ。二人を庇うように立つその胸には、閑白の剣が貫通し、背中から切っ先が見えている。それでもまだ幸いなのは、急所から幾分かずれていることだろう。
「師兄!」
彩藍方が真っ青な顔で叫ぶ。血を吐いた翳黒明は翳白暗の上に覆いかぶさるように崩れ落ち、小さく苦しそうな声をあげた。
「もう立ち上がることすらできないだろう!」
閑白が剣を振りかぶった瞬間、煬鳳は無我夢中で 閑白に体当たりを喰らわせる。予想だにしなかった方向から衝撃が来て閑白は剣を取り落とし膝をつく。
「このっ!」
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