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そこまで言ったとき、丁度起き上がる途中だった彩藍方の顔が凍り付く。煬鳳たちの方に向かって指を差し――。
(違う!)
咄嗟に煬鳳は振り返る。視界に入ったのは、鳥ともつかぬ化け物だ。鳥のようであり、鳥とは言い難い。六つの目を持っているが、その下には更に人の顔がついている。その人間の顔は閑白そのもので、背筋が凍るような悍ましい笑みを浮かべていた。体には足と翼が複数生えており、それらをバタつかせながら煬鳳たちに迫る。その光景があまりに不気味で煬鳳は喉の奥から声が出せなかった。
巨大な怪鳥は地響きを轟かせながら煬鳳たちに向かってくる。鳴き声は大地を揺らすほど激しく、頭が割れるほどの衝撃を呼び起こす。
巨大な体躯と素早さ、そしてそして背後にいるであろう小黄や鸞快子たちのことを考えれば避けることも難しく、煬鳳は必死で頭の中でどうやったらこの攻撃をはじき返せるかを考えた。
「白暗のことを頼む」
「え!?」
よろけながら立ち上がった翳黒明は煬鳳たちの前に立つ。
生きているとはおよそ言い難い状態の翳白暗のことを、それでも命を懸けて守ろうとする翳黒明に堪らず煬鳳は「馬鹿野郎!」と叫ぶ。少しだけ翳黒明が苦笑したのを見て、もう一度煬鳳は同じ言葉をつぶやいた。
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