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翳黒明からあふれ出した翳炎は、翳冥宮の広間を走り抜け、鮮やかな紋様を描き出す。
刹那、激しい爆発が続けざまに巻き起こり、閑白を包み込んだ。
『ぎゃあああああ!?』
閑白の絶叫が広間に響く。
燃え上がる火の粉が花のように散り落ちて、床を覆っていた敷布が炎の海のように燃えてゆく。燃え尽きたその下からは鮮やかに輝きを放つ大きな陣が姿を現した。
(あれは……逆極陣!)
黒曜の記憶の中で煬鳳は見た。翳冥宮が何者かに狙われていると感じた宮主が、密かに翳黒明だけに伝えられた翳冥宮とっておきの仕掛けだ。
万が一敵が攻め込んできたら広間で迎え撃てと――。
翳黒明が過去それを使うことはなかったが、よもや時間を経てこのような形で使うことになるとは……。
「っ……!」
爆発の衝撃で天井が吹き飛び、瓦礫が頭上に落ちてきた。咄嗟に煬鳳は自分の頭を庇いながら、動かない白暗の頭を体で覆い隠す。
(黒明は……?)
あれほどの傷を負っているのに、無事であるわけがない。翳黒明明のいた場所に目をやれば、片膝をついている翳黒明の姿が目に入った。
「黒明!」
煬鳳は叫ぶが、既に翳黒明は気力だけでなんとか態勢を維持しているように見える。
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