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閑白は未だ爆発の中にいるが、翳黒明一人の力では動きを抑えるだけで手一杯のようだ。それでも、いかに逆極陣を使ったとはいえ手負いの身ではどれほどこの状態を維持できるかも分からない。
堪らず煬鳳は凰黎を見た。
「凰黎……! 俺、俺……」
煬鳳にはあの陣の使い方が分かる。黒曜の夢の中で宮主が教えてくれた光景、その全てを煬鳳は見たからだ。そして、煬鳳は翳黒明の使う翳炎と同じ力を持っている。
今、翳黒明の助けになることができるのは、煬鳳だけなのだ――。
「分かりました、私が煬鳳の熱を下げます」
煬鳳の言いたいことを察した凰黎はすぐさま頷く。煬鳳は顔を綻ばせ、凰黎に頷き返す。
翳黒明が倒れる前に、急がないと――!
煬鳳が翳黒明の元へ行こうとしたそのときだ。
隣で白い影が動いたのを感じ、煬鳳は反射的に顔をあげた。
煬鳳の視線に気づいた白い影は、視線だけ動かして柔らかく微笑む。――その微笑みは間違いなく夢の中で見た翳白暗のもの。思いもよらぬ出来事に、煬鳳は考えるのも動くことも忘れ、翳白暗の背中を目で追った。
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