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翳黒明は震えながら絞り出す。
「傍にいるじゃないか」
鸞快子の言葉に翳黒明は驚き顔をあげる。翳黒明の胸を指差した鸞快子はもう一度彼に言った。
「いま君は彼と共に存在している。間違いなく、これからは兄弟二人で共に生きていくんだ」
鸞快子は彩菫青の髪から翳白暗の髪飾りを抜き取る。あっ、と思ったがもともとこの髪飾りは彩菫青への物ではなく翳白暗から翳黒明に向けての贈り物だった。
「これは君のものだ。きっと彼が君のことを守ってくれるだろう」
そう言って、鸞快子は髪飾りを翳黒明の髪に付け替える。
煬鳳は二人のやり取りを、なんとも言えない気持ちで見つめていた。
彼が俯くたびにさらりと揺れる白い花の髪飾りは、どれだけ翳白暗が想いを込めてそれを作ったのか……彼の気持ちは痛いほど煬鳳には理解できたのだ。
果たして良かったのか悪かったのか。
しかし一つだけ言えることがある。
形はどうあれ、翳白暗の願いは叶ったのだ。
『だから……一生。ずっと、ずっと。黒明の傍にいさせて』
言葉通り、これからずっと二人は共に生きてゆく。
翳黒明は翳白暗の中で。翳白暗は翳黒明の魂魄と共に。
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