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閑白は黒炭となり、残った炭も砂のようにさらさらと崩れてゆく。完全に消え去るのも時間の問題だろう。
「俺、彩鉱門に戻らないと……」
押し寄せる疲労と安堵で誰ひとり口を開かなかったが、彩藍方の一言でみな顔をあげた。
彩菫青が受けた傷は、既に凰神偉によって応急処置がなされている。安静にさえすれば命に別状はないだろうが、さりとてこのまま放っておくわけにもいかないだろう。
「なら俺たちも……」
と言いかけた煬鳳を凰黎が止めた。
「我々にはまだやらねばならないことも残っています。貴方も私たちも多かれ少なかれ疲れているのですから、まずは一度体を休めた方が良いでしょう。それに、彼が彩鉱門に戻ったら師兄の怪我も、これまでの経緯も掌門に説明せねばなりません。我々を出迎える余裕などないのですから、ここで見送りましょう」
煬鳳は少しでも彩藍方の力になりたかったのだが、凰黎のいうことはもっともなことだ。いま彼は師兄が戻ってきて、それを父である掌門に伝えたい。煬鳳たちに構っている余裕はないのだ。
「そうだな……。凰黎の言う通りだよ。……彩藍方有り難うな。ここは俺たちに任せて、お前はいち早く行ったほうがいい」
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