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そう言って彩藍方が抱える彩菫青の片腕を肩に掛け、「外まで手伝うよ」と煬鳳は言った。
「お待ちなさい――」
はじめ煬鳳は、背後にいるうちの誰かが呼び掛けたのだろうと思った。しかし、よくよく考えるとその声は老人のもので、煬鳳と共にやってきた者たちの中に誰一人合致する人物はいないことに気づく。
なら、誰が?
そう思ってきょろきょろと見回すと、黒炭となった閑白の上に老人が立っていた。
いや――浮いていたのだ。
「煬鳳!」
悲鳴にも近い凰黎の声が聞こえる。すぐさま凰黎が飛び出し煬鳳を守るように立ちはだかり、凰神偉もまた凰黎のあとを追うように老人の前に立つ。
老人に対し柳眉を逆立てる二人は、信頼する者に向ける表情とは明らかに異なっている。
「おやおや、これはこれは」
口元に笑みを湛えたまま、老人は動かない。それがいっそう不気味に思えて仕方ない。
「暫く見ないうちに随分と反抗的になったようじゃのう? 仮にも恒凰宮の宮主とその弟君ともあろうお方が」
「貴方さまが十八年前にあのようなことを仰らなければ、我々も違ったことを申し上げたでしょうに」
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