07: 海誓山盟明和暗(不変の誓い)

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「勿体のないことよ。お主ならすぐに飛昇できるじゃろうて」 「……」  そりゃあ凰黎(ホワンリィ)は俺と一緒に生きていくのだから、仙界(せんかい)になんか行くわけがないだろう、と煬鳳(ヤンフォン)は心の中で毒づいた。  白い衣を身に纏い、優雅に扇を持つ白髪の老人の姿はまさに絵から抜け出してきたような仙人そのもの。口調も穏やかで淀みなく、いかにも風雅な賢人といった趣だが、一つだけ不可解な点がある。 (目が見えないのか?)  老人は白い布で両眼を覆っており、彼の眼差しを直接見ることはできない。口元は微笑んでいるが、目が笑っていないような気がして、どうにも不安が拭えない。 「爺さん目は?」  恐ろしい、そう思いつつも煬鳳(ヤンフォン)蓬莱(ほうらい)に尋ねる。凰黎(ホワンリィ)が「黙って」と小声で制したが、なんとなく聞かずはにいられなかったのだ。  蓬莱(ほうらい)は、老人らしい笑い声をあげたあと、煬鳳(ヤンフォン)を見た。顔は隠れて目は見えなかったが、敵意のこもった視線を向けられているように煬鳳(ヤンフォン)には思えて仕方ない。 「ほほ。よく聞きづらいことを明け透けに聞くものじゃな。……良いじゃろう、教えてしんぜよう。目で物を見るとは限らぬのじゃよ。ときには目を使わずともすべてを見通すこともできる。例えば、お主が儂に恐れを抱いていること。そして消えたと見せかけてこそこそと隠れている門派の存在であるとか、な」  老人の言葉が刺さる。  煬鳳(ヤンフォン)は反射的にこの老人を恐ろしいと感じた。何気なく考えていたことを、恐らく彼は見抜いたのだ。
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