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さらには恐らく……彩藍方たち彩鉱門の存在までも。
そしてそれだけではなく、小柄の老人から感じる不釣り合いなほどの大きな力。それを隠すことなく、ある意味脅迫にも似た意味合いを持つこの老人のふるまいが、無意識に煬鳳を警戒させる。
(流石は、凰黎を仙界に連れて帰ろうとした仙人だ……)
これほどまでに大きな力を持っていたら、恒凰宮の宮主も争いを避けるしかない。いまは亡き彼らがどのような気持ちでいまの結論に至ったのか、煬鳳には分かる気がした。
「ところで蓬莱様。このような場所にわざわざお越しくださったのは、ただ我々に会うためだけではありませんよね?」
すかさず凰黎が蓬莱に向かって切り出した。
それで煬鳳は、いまこの場に蓬莱が来たことが実に不可解だったことに気づく。閑白は口ぶりからして彼に仕えている仙人だろう。翳冥宮の一件にも蓬莱はかかわっているのではないか、と考えた。
「そうそう。大事なことを忘れるところじゃった」
蓬莱は莞爾と笑い、足元の黒炭を踏みしめる。先程まで閑白であったその炭は微かな波動を発したあと、静かに沈黙した。
その恐ろしく冷淡で非情なさまを見て誰もが言葉を失い、青ざめた。
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