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「どうやら閑白が儂の知らぬところでとんでもないことをしでかしておった。儂はそのことを詫びるためにこうして仙界から降りてきたのじゃ」
よくもまあ、いけしゃあしゃあと言うものだ。
少なくとも、煬鳳が見る限り閑白は初めから最後まで自分一人の考えで動いていたようには思えない。仮に先ほどのことが彼の独断だったとしても、翳冥宮の一件は魔界まで巻き込み相当入念に仕込まれたものだった。それを閑白の上に立つ蓬莱が知らなかったとはとても信じることはできないだろう。
「そうでしたか……。蓬莱様のお心遣いに感謝いたします。……ですが我々はこのあともまだやることも残っております。どうか我々のために時間を使わず、仙界へお戻りください」
「幼い頃から利発な子であったが。大きくなるといっちょ前に口を利くようになったものだのう。やはり人との繋がりというものは、やすやすと断ち切ることはできないものなのだな」
呆れたような蓬莱の声。その言葉は年寄りの、ごく普通の何気ない言葉だったがどこか恐ろしさを感じさせた。
(怒って、いるのか……?)
閑白に対してなのか、それとも蓬莱の言葉にすげなく返す凰黎に対してなのか。
――いや、違う。
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