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彩藍方はそう言い残し、大急ぎで鉄鉱力士に乗って黒炎山へと帰っていった。
「騒がしい奴が減るとなんか凄い静かになったな」
崩れかけの翳冥宮の外観を眺めながら、これまでのことを思い出す。
模造品とはいえ、彼ら彩鉱門の鉄鉱力士は閑白の分身たちと対等にやりあっていた。口数は多くて騒がしかったが、彩藍方も彼の門派も大したものだ。
あとから知ったことだが、蓬莱が現れたと同時か僅か前に、鸞快子と小黄は姿を消していた。煬鳳としては万が一のときに鸞快子がいてくれたのなら蓬莱を退けることができたのではないか、と思わなくもない。
しかし、
「小黄にはまだ秘密がある。万に一つでも蓬莱に狙われてはいけないと思い、咄嗟に姿を隠したのだ」
という鸞快子の言葉にも一理ある。
だが、それで余計に鸞快子という人物の底知れぬ力を煬鳳は思い知った。
(だって……蓬莱ですら小黄の存在に、いや鸞快子と二人の存在に気づかなかったってことだろ?)
あの蓬莱を前にして、彼に気取られないように姿を隠す方法など、存在するのだろうか?
けれど鸞快子はやはり「運が良かっただけだ」と笑ってはぐらかすのだ。
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