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翳冥宮に溜まっていた陰気は凰神偉と凰黎が取り除いてくれた。もともと閑白が無理やり陰気を増幅させていたことがそもそもの原因であったので、対応自体はさほど難しいものではなかったようだ。
残念ながら煬鳳にはできることがない。
それで仕方なく、小黄と手を繋ぎながら彼らの働きぶりを眺めていた。
「黒明」
ぼんやりと翳冥宮を見つめる翳黒明に煬鳳は呼び掛ける。翳白暗の持つ真珠のような髪の毛は、翳黒明の魂魄が入ったことにより下の方が黒くなっている。このまま魂魄が定着したら完全な黒い髪になるかもしれないが、それは翳黒明が寂しがるだろう。
「お前たちには感謝してもし切れない」
翳黒明が口を開く。
聞こえていないのではないかと思ったが、一応聞こえてはいたようだ。
「お前たちのお陰で翳冥宮と白暗たちの仇を取ることができた。自分がいかに愚かだったのかも痛いほど思い知った。それでも、俺はこれから踏み出すことができる」
翳黒明は髪飾りに触れた。羊脂玉の花弁が触れ合って、さらりと音を立てながら約束の花は揺れる。夕日を受けた白い花の飾りは、きらきらと輝きを放ち美しい。
「白暗と約束、したからな」
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