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蓬莱の力はとんでもなく強い。戦わずしてそれが理解できる程には凄かったのだ。
そんな人物を前にして、凰黎は誰一人傷つかないようにと必死で堪えていた。
(一番辛かったのは、きっと凰黎だったろうに……)
すべてを推し量ることはできないが、あのときの凰神偉と凰黎、二人の恨事の念はいかほどであっただろうか。煬鳳は彼らの心が少しでも楽になればと努めて明るい口調で同意した。
「まあ、俺も初めてあの蓬莱って爺さんに会ったけど……大して言葉を交わしたわけでもないのに凄い疲れたよ」
「でしょう?」
凰黎から笑顔が漏れる。自分の苦労が少しでも理解されて嬉しかったのだろう。煬鳳は大きく頷き言葉を続けた。
「うんうん! それに凄い不気味だった。なんであいつ、そこまで凰黎に執着するんだ? 有能なやつなんていくらでもいるだろ? ちょっと異常なくらいのしつこさじゃないか?」
なぜなのか、凰黎の表情が微かに曇る。
「それは……それだけの秘密を私が持っている、ということですよ」
「秘密?」
躊躇いと気まずさをない交ぜにしたような顔で、凰黎は頷く。その言葉の続きを煬鳳は待っていたが、結局凰黎から次の言葉は出てこない。
(不味いこと聞いちゃったかな……)
すぐに話を変えようと、煬鳳は言葉を探すのだが、焦れば焦るほど頭の中は真っ白だ。
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