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そんな時煬鳳たちの背後から翳黒明と凰神偉の声が聞こえてきた。
「さっきのあいつ……仙人だっけか? ああいうお高いところにいる奴は何から何まで信用ならないな。閑白の件だって知らないというのも正直に言えば怪しいものだ。白暗のことだって都合のいい道具としか見ていなかったんだろうな」
「全く持って同感だ。彼らは人界に住む者を何だと思っているのだろう。彼らは私の弟の人生を大きく狂わせた。その結果がどうであっても、そのような所業を許せるはずがない」
翳黒明の言葉に凰神偉はもっともだとばかりに同意する。なんだか妙なところで彼らは意気投合してしまったらしい。
「……凰黎。お前結構兄貴に愛されてるんだな……」
そんな彼らのやり取りを見て思わず煬鳳は苦笑する。
「羨ましいな」
突然のことだ。先程まで息巻いていた翳黒明が、力なくぽつりと零した。
「恒凰宮の宮主。俺は貴方が羨ましい。……俺も、かつての弟にそこまでの気持ちを傾けてやったのなら……。この結末は変えられたのだろうか……」
様々な苦難に飲まれ続けてきた彼に掛けてやる言葉は、誰も持ち合わせてはいない。煬鳳たちは何も言えず、沈黙を守るのみ。
「いや……すまない。忘れてくれ。俺はそのようなことを願うことすら許されない。あいつを殺したのは他でもない俺なのだから」
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