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そう言うと翳黒明は小さく自嘲気味に笑ったが、やはり誰一人その言葉に返すことができない。
(気まずい……)
誰か翳黒明に対して、うまいことの一つでも言ってくれないものだろうか。ちらちらと凰神偉や凰黎、それに後ろを歩く鸞快子に視線を向けるが、誰一人として言葉が出てこない。
――誰でもいいから助けて!
神に祈るがごとく、煬鳳が思ったときに神は現れた。
「大哥。それ以上言ったらだめ」
それは小黄だった。
「小黄……?」
「それ以上自分を責めたら、大哥のだいじな人が悲しむから」
「済まない、だが……」
「翳黒明」
小黄がはっきりとした口調で呼び掛ける。驚いた翳黒明が顔を向けると、小黄は悲しげな表情で翳黒明を見つめていた。
「翳白暗は翳黒明の傍にいるよ、いまもずっと。だからそれ以上自分を責めたり悲しまないで」
その言葉に応えるように、翳黒明の髪飾りがさらりと音を奏でる。
翳黒明は戸惑い暫く視線をあちこちと彷徨わせ、それから小さく頷いた。
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