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恒凰宮に辿り着くと燐瑛珂がみなを出迎えてくれた。
「お帰りなさいませ、宮主様。皆さま」
泰然とした口調の彼は、出迎えたときも見送ったときと何ら様子が変わることはない。
そんな燐瑛珂に対し、凰神偉は労わりの言葉を告げる。
「留守の間はご苦労だった」
「恐れ入ります」
いつも通りの無駄のない言葉。しかし凰神偉はそのあとにもう一言続けた。
「あとで仔細は説明するが、いまはみな疲れている。沐浴の準備と各々の部屋を用意してやって欲しい」
「畏まりました。さあ、皆さまこちらへ」
その燐瑛珂の言葉を聞いて、煬鳳たちはようやく安心できる場所に戻ってきたことを実感する。同時に、体の底からどっと疲れが湧き上がってくるのを感じて堪らず煬鳳は、
「凰黎、俺もう疲れた~」
と凰黎に抱き着いた。
凰黎はそれを、霊力を使ったせいかもしれないと思ったのか慌てて煬鳳の額に己の掌を押し当てる。
「おやおや、熱は……うん、上がっていないようですね、宜しい。……それなら煬鳳が元気になるように私が……」
ごほん、と咳払いがその言葉を遮った。
当然、咳払いの主は凰神偉だ。
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