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「恒凰宮には父上と母上も眠っておられる。……ここでそのようなことを言い合うのは、そなた達の抱える問題が解決したあと、父上母上に報告してからにしなさい」
「……」
煬鳳も凰黎も、凰神偉の言葉に固まってしまった。
(問題が解決したあとって……いまは駄目ってことじゃないか!)
凰黎とのことを認めたのか認めてないのか。とりあえず心の整理がつくまで時間稼ぎをしたいといったところだろうか。
――心が狭い。
凰神偉、実に心の狭い男である。
「そんなことより、阿黎」
しれっと心の狭いことを言ったあと、再び神妙な面持ちで呼びかけたのは凰神偉だ。先ほどとは明らかに表情が異なっている。
「原始の谷に行く前にそなたの抱える万晶鉱の秘密を、きちんと彼に話しておくべきであると私は思う」
「兄上……ですが」
どうやら凰神偉は、先ほどの煬鳳と凰黎の会話を聞いていたようだ。
「いままでそなたの秘密は私と父上、そして母上だけが知っていた。……しかし、このさき彼と共に生きてゆくつもりなら、そなたの抱える重みは己の家族になる人にきちんと話してあげなさい」
煬鳳はその言葉にどきりとした。
先ほどまで心が狭いなどとのたまっていたが、実のところ凰神偉はちゃんと煬鳳のことを考えてくれていたのだ。
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