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(いちゃつくのはあとにしろって言われたけど……)
しかしそれでも彼は煬鳳のことを、家族になる人間だと言ってくれている。認めてくれているのだ。
それだけで煬鳳の胸は一杯になってしまった。
「分かりました。……有り難うございます、兄上」
「ふん。頑固な弟を持つと苦労するものだ」
照れ隠しなのか、捨て台詞と共に凰神偉は長く続く走廊の奥へと消えてゆく。
「では皆さま、こちらへ」
そうして、残された煬鳳たちを燐瑛珂がすかさず案内してくれることになった。
* * *
「ふあ~~! 疲れた!」
凰黎と共に宛がわれた西の廂房へと案内された煬鳳は、戸が閉められるなり寝台に飛び込んだ。寝台の寝具はとてもふかふかとしていて、うっかり気を抜けばそのまま泥のように眠りに落ちてしまいそうだ。
「夕餉まで少し時間があります。そのあいだ少しだけ、私の話を聞いて貰っても良いですか?」
尋ねるように言った凰黎の言葉に煬鳳は飛び起きた。
「もちろんさ! いま凰黎の話を聞く以上に大事なことなんてないからな!」
「ふかふかの寝台で寝ることよりも?」
「うっ、寝るつもりはなかったんだ。体がだるくてつい飛び込みたくなっただけ!」
「ふふふ、冗談です」
慌てる煬鳳に、悪戯っぽく凰黎が笑う。
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