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この竹の絵を選んだとき、宮主はよもや蓬莱が凰黎を連れ去ろうとするとは思わず、その先に途方もない困難が待ち受けているとまでは思わなかっただろう、しかし凰黎は数々の困難に負けず、沢山の人々に愛されこうして今も人界で過ごしている。
きっと凰黎の両親がこの掛け軸を残しておいたのも、離れていても凰黎がこの竹の絵のように強くあって欲しいと願いを込めていたのだろう。
それに、凰神偉も。
中庭へと通じる格子戸には、夕日を浴びた笹の影が落ち、どこか寂しさを感じさせる。
本来は凰黎が毎日見るはずだった光景をぼんやりと見つめながら、今日一日に起こった様々な出来事を思い出し、煬鳳は物思いに耽った。
「さて……。時間も限られていますから、本題に入りましょう。私がむかし原始の谷に迷い込み、万晶鉱を持ち帰ったことは話しましたよね?」
「うん。そのあと蓬莱がそれを知って恒凰宮に押しかけてきたんだったな」
「その通りです」
凰黎は頷く。これは恒凰宮から白宵城へ向かう途中で聞いた話だったから、煬鳳はとてもよく覚えている。
「万晶鉱はすさまじい力を持つもの。なぜそのような力を持っているかは彩二公子が以前説明して下さいました」
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