109人が本棚に入れています
本棚に追加
/1358ページ
「彩鉱門の門弟たちは唯一、万晶鉱から流れ込む記憶の奔流を遮断する術を持っているそうです。ただ、あくまで彼らは万晶鉱を使って武器や宝器を造り上げるのが目的であり、危険性を知っているからこそ彼らは未来を垣間見ないのだとか」
およそ想像もつかないが、やはり万晶鉱とはとんでもない代物に違いない。そんな鉱石を彩鉱門はよくまあ扱えるものだと煬鳳は感心してしまう。
(あれ? でも変だな?)
先ほどの話の通りであれば、凰黎は万晶鉱に触れた。ならば彼も万晶鉱から記憶の濁流の洗礼を受けたのではないだろうか?
煬鳳が凰黎に尋ねる前に凰黎は別の話題を投げかけた。
「私が蓬静嶺に引き取られることになった、切っ掛けは覚えていますよね?」
「ああ、しつこい爺さんが言い寄りまくってきたからだろ?」
一つ一つ確認するように凰黎は煬鳳に問いかける。しかしあまりに歯に衣着せぬ言い方をしたからか、凰黎が苦笑した。
「言い方……。まあ、そうであったとして。なぜ彼がそこまで私のことを欲したと思いますか? 単なる五歳の子供です」
「有能だから?」
「半分は当たっています。もう半分、それは……彼らを含め、皆が一様に欲している原始の谷の力。万晶鉱に触れ、過去と未来を垣間見た者の一人だからです」
最初のコメントを投稿しよう!