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やはり凰黎も過去と未来を、万晶鉱の記憶を見たのか。先ほど考えていたことの結論が導き出され、やっぱりという気持ちと驚きとで煬鳳は一杯になった。
ほぼすべての人間が万晶鉱に触れれば死に至る。
――にもかかわらず、凰黎は『例外』となって生還したのだ。
「そもそも、原始の谷は封印されていた。それなのに何故か私は原始の谷に迷い込み、しかも万晶鉱に触れ、子供でありながら無傷で戻ってきた。彼らはそれで『神に選ばれた子供』だと私のことを思ったようです」
凰黎が禁忌である原始の谷に入ったのは本当に、神のいたずらか奇跡としかいいようがない。当時の恒凰宮の宮主――凰黎の両親は相当驚いたそうだが、それも無理はないことだろう。
「……いまでもそれが何故なのか、分かりません」
凰黎は俯く。その瞳は微かに揺らめいている。
「じゃあ、凰黎は過去のこととか未来のこととか、知ってるのか?」
煬鳳は恐る恐る尋ねた。
「ほんの少しは。ですが、それとて過去未来全ての事象から見たら、空から落ちた雫の一滴のようなもの。決して自分が選んだ過去や未来を見ることができるわけではないので……」
ただ、そのことによって恒凰宮は大騒ぎになった。
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