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そうでなければ、凰黎が垣間見た過去ないし未来の中になにかがあったのだろうか、と煬鳳は考えた。
「なあ。実際、どうだったんだ? 万晶鉱が見せたものって、凄かったのか?」
「内容によってはみなが羨ましがるかもしれません。けれど正直な気持ちを言えば、知っていたら万晶鉱には触れたくはありませんでした」
凰黎は苦々し気に言ったあと、ふと顔を上げる。
「……いえ、知っていてもやはり触れたかもしれませんね」
急に真逆のことを言った凰黎に煬鳳は驚く。前言撤回もいいところだ。
どこから聞いても先ほどの話の中に「触れたかった」という要素はない。
「なんで?」
「秘密です」
煬鳳の問いかけに凰黎は嫣然と微笑む。
先ほどまで深刻な顔をして話していたはずの凰黎がそのような表情をしたので、煬鳳は堪らずに訴えた。
「ず、ず、ず、ずるいぞ! 俺に隠し事していいと思ってるのか!?」
「それは違います。貴方に隠し事をする気は全くないのですが、世の中には知らない方が良いこともあるのです」
「いま秘密にしてるだろ! 気になる!」
それでも煬鳳が駄々をこねると、凰黎はにこにこと煬鳳の頭を撫でる。これではまるで子ども扱いだ。
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