08:五趣生死情侣们(恋人たち)

13/85
前へ
/1358ページ
次へ
 しかし、穏やかな表情を浮かべて凰黎(ホワンリィ)煬鳳(ヤンフォン)を見つめる。その優しさと切なさの入り混じった瞳は煬鳳(ヤンフォン)の心をぎゅっと掴む。 「過去や未来を知るということは、危険を伴うことですから。ですから私は誰も危険な目に遭わせたくはないのです」 「なら聞くけど。知らないときとどっちが危険なんだ?」 「どちらとも言えません。ただ、どちらだとしても結局のところ足掻くのでしょう」 『けちけちしないで教えてくれよ』  そう言いたかったが、煬鳳(ヤンフォン)の口からはとても言うことはできなかった。  凰黎(ホワンリィ)は秘密にしたいわけではなく、言えないのだと悟ったからだ。  それでも万晶鉱(ばんしょうこう)が人々を惹きつけてやまないのは、やはりそれだけの苦労に見合う価値があるのだろう。なにせ未来を知ることができる、というのは自分たちのこれからを変えられる可能性を秘めている。その気になれば文字通り世の理を支配できる、というわけだ。  ならばなぜ、と煬鳳(ヤンフォン)は思う。  凰黎(ホワンリィ)は過去と未来を垣間見たと言った。  それなのになぜ過去や未来に干渉しようとはしないのだろう?  と。 「へぇぇ……難しいなあ。俺は万晶鉱(ばんしょうこう)に縁が無くて良かったよ」  煬鳳(ヤンフォン)の言葉を受けて、凰黎(ホワンリィ)は思わず破顔する。  煬鳳(ヤンフォン)の言い方がよほど可笑しかったらしい。 「ふふ。煬鳳(ヤンフォン)にかかると、万晶鉱(ばんしょうこう)も形無しですね」
/1358ページ

最初のコメントを投稿しよう!

109人が本棚に入れています
本棚に追加