08:五趣生死情侣们(恋人たち)

14/85
前へ
/1358ページ
次へ
「そ、そんなんじゃないよ! ただ、なんだか色々面倒だなって思ったんだ。それに、全然いいこと無さそうだしさ」 「でしょう? つまり、そういうことなんです」  煬鳳(ヤンフォン)の考えに同意するように、凰黎(ホワンリィ)もにっこり笑ってと頷いた。  それから暫く他愛のないやり取りをかわしたあと、煬鳳(ヤンフォン)はおもむろに凰黎(ホワンリィ)に語り掛ける。 「でもさ。凰黎(ホワンリィ)は辛い思いをして嫌だったと思うけど……俺は、凰黎(ホワンリィ)が原始の谷で万晶鉱(ばんしょうこう)を持ち帰ってくれて、良かったと思ってる」 「どうしてそう思ったのですか?」  煬鳳(ヤンフォン)の話を嫌がるでもなく、凰黎(ホワンリィ)は耳を傾けてくれた。その口元は微笑んでいる。 「うん。……凰黎(ホワンリィ)蓬静嶺(ほうせいりょう)に来なかったら、俺は凰黎(ホワンリィ)と約束もしなかっただろうし、きっと凰黎(ホワンリィ)と知り合わないまま玄烏門(げんうもん)でみんなと普通に暮らしてたと思う。だから……勝手な言い草だけど俺は凰黎(ホワンリィ)と知り合えて嬉しかったし、いまこうして一緒にいられることが本当に幸せ……わっ!?」  言い終わる前に凰黎(ホワンリィ)に抱きしめられて煬鳳(ヤンフォン)は続きを言うことができなくなってしまった。 「嬉しいです。……私も、ああは言いましたが決して原始の谷に迷い込んだことを、そして万晶鉱(ばんしょうこう)に触れたことを後悔はしていません。結果としてその事実がなければ我々の運命は全く違ったものになったでしょうから……」
/1358ページ

最初のコメントを投稿しよう!

109人が本棚に入れています
本棚に追加