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「そ、そんなんじゃないよ! ただ、なんだか色々面倒だなって思ったんだ。それに、全然いいこと無さそうだしさ」
「でしょう? つまり、そういうことなんです」
煬鳳の考えに同意するように、凰黎もにっこり笑ってと頷いた。
それから暫く他愛のないやり取りをかわしたあと、煬鳳はおもむろに凰黎に語り掛ける。
「でもさ。凰黎は辛い思いをして嫌だったと思うけど……俺は、凰黎が原始の谷で万晶鉱を持ち帰ってくれて、良かったと思ってる」
「どうしてそう思ったのですか?」
煬鳳の話を嫌がるでもなく、凰黎は耳を傾けてくれた。その口元は微笑んでいる。
「うん。……凰黎が蓬静嶺に来なかったら、俺は凰黎と約束もしなかっただろうし、きっと凰黎と知り合わないまま玄烏門でみんなと普通に暮らしてたと思う。だから……勝手な言い草だけど俺は凰黎と知り合えて嬉しかったし、いまこうして一緒にいられることが本当に幸せ……わっ!?」
言い終わる前に凰黎に抱きしめられて煬鳳は続きを言うことができなくなってしまった。
「嬉しいです。……私も、ああは言いましたが決して原始の谷に迷い込んだことを、そして万晶鉱に触れたことを後悔はしていません。結果としてその事実がなければ我々の運命は全く違ったものになったでしょうから……」
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