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凰黎の腕がぱっと離れたと思うと今度は膝から抱え上げられる。
「わ!? 凰黎!?」
凰黎は煬鳳を寝台に連れていくと、ふかふかの被褥の上に煬鳳を降ろした。煬鳳が起き上がろうとすると、凰黎の両手に両腕を抑え込まれてしまう。
煬鳳の頬に触れるほど凰黎は顔を寄せ、熱い言葉を耳元で囁く。
「こうしている時間が惜しい。もっと貴方に触れていたい。貴方の見せる表情を私の瞳に全て焼き付けて、このまま今夜は縫い留めてしまいたい」
「ほ、凰黎!? 兄君がその、さっき……」
「それはそれ、これはこれ」
いやいや、絶対ばれるから!
煬鳳はそう叫びたかったが、凰黎にそれを阻止されてしまう。じたばたと暴れ「兄貴に怒られるぞ!」と言ってみるも「兄は兄であり保護者ではないので……」などと調子のいい言い訳を言ってくる。
――もう、なるようになれ!
そう思った瞬間だ。
「夕餉の支度が調いました。ご案内いたします」
狙いすましたかのように部屋の外から掛けられる声。さすがにこれには凰黎も咄嗟に煬鳳から体を離す。
「有り難うございます。支度をしたら出ますので」
取り繕うかのようにそう言うと、慌てて煬鳳を助け起こしたのだった。
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