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振り返り翳黒明にも同様に。
「……俺は翳冥宮の宮主になるつもりはない。……しかし、いま翳冥宮の関係者は俺だけであるし、魔界の新しい皇帝陛下が翳冥宮を任せられる人材を連れてきてくれるまでは、そういうことにしておこう」
『相変わらず素直じゃないな』
斜に構えた物言いをする翳黒明を窘めたのは他でもない、黒曜だ。本をただせば同じ人間が己に突っ込むのはいかがなものだろうか。
「煩いぞ。なんならお前が翳冥宮の宮主になったっていいんだからな」
『遠慮しておく。お前は白暗に託されたんだから、しっかり頑張れよ』
「……」
同一人物なのに他人事の黒曜に対して、なにか言いたげな目で翳黒明は見ていたが、黒曜が小黄の方に逃げてしまったので結局諦めたようだ。
『クエェ』
黒曜が小黄の腕の中に飛び込んで来たので、小黄は零れんばかりの笑顔を見せる。
「曜曜! ねえ、曜曜も一緒に行くんだよね?」
『クェ!』
その通りだ、と言わんばかりに黒曜は鳴く。どうでもいいが、先ほどまで普通に翳黒明と会話をしていたのに、なぜ小黄の前だと『クェ』しか話さないのだろうか。
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