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(まあ、その方が小黄が喜ぶからなんだろうなぁ……)
自分の体に住んでいる存在だが、実に調子のいい鳥だ。
「鸞快子。貴方はなぜ原始の谷に小黄を連れていこうと思ったのですか? 万晶鉱に触れたものは命を落とす可能性もあるのですよ。……もっとも、貴方が言ったということは、そうならない確信があるのでしょうが」
凰黎が小声で鸞快子に尋ねる。煬鳳は二人のやり取りにそれとなく耳を傾ける。
「実は小黄の記憶を私の力で戻せるか、少し試してみたが無理だった。彼の意識の中は驚くほど広く深く、そして空っぽだ。普通ではそのようなこと、あり得るはずがない」
「つまり、一般的な子供とはかけ離れた意識の広さと深さがあり、どこにも記憶だけが見当たらない。だからこそ、万晶鉱の力で彼の記憶を一気に埋めることができないかと考えたのですね」
「そういうことだ。……一般的な子供どころか、人間だってあれほどの領域を持ち合わせてはいないだろう。つまり、彼の記憶を戻すならそれに見合う力でなければならない」
鸞快子の言葉に、凰黎は溜め息をつく。
「なるほど。……理解しました。ですが絶対に小黄を危険な目に遭わせないと、約束してください」
「もちろんだ」
そう言って鸞快子は頷いた。
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