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(もし星霓峰の雪が溶けていなかったら……)
そのときは麓の村や白宵城に雪崩が押し寄せていたかもしれない。全てを雪崩が飲み込んでいくさまを想像して、煬鳳は身震いをした。
幸いにも暫くして地震は落ち着いたようだ。まだ次の揺れが来るのではないかとみなが警戒して様子を窺っていたが、半刻ほど待ってみても再び揺れることはなかったためにようやくみなは安心してゆっくりと立ち上がり始めた。
「うわあああん……」
激しい揺れに怯えたのか、小黄が泣き始めてしまったようだ。翳黒明の胸にしがみ付き、喚き叫んでいる。翳黒明もこれには困ってしまったようで、おろおろしながら「ちょっと、助けてくれよ……」と煬鳳たちを見る。
「あー、小黄? 小黄? 煬大哥の方においで?」
「わああああん……」
煬鳳は「おいで」と手を差し伸べたのだが、肝心の小黄は泣くことに必死で全く煬鳳を見ていない。
「駄目だな。こうなったら泣き止むまで黒明が――っ!?」
突然煬鳳は体温の上昇を感じ、耐え切れずに膝をつく。
「煬鳳!?」
凰黎の叫ぶ声がしたが、駆け寄る前に凰黎は足を止めた。
「翳黒明!? 二人とも、一体なにが!?」
「小黄を、頼む……」
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