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殆ど放り投げるようにして小黄を凰黎に託した翳黒明は、やはり煬鳳と同じように膝を折ってしまったのだ。立て続けに黒曜もぼとりと地面に落ち、弱弱しく『クエェ』と鳴いている。
そして煬鳳は感じる、翳黒明の体もまた煬鳳と同様に体温が上昇していることに。
「嘘、だろ……!?」
なにが切っ掛けでこうなったのか。煬鳳はいま霊力をこれっぽっちも使ってはいない。同様に翳黒明だって今日は朝から一度も霊力を使ってはいないはずなのだ。
――なのに、なんでだ!?
しかしこのような状態でまともに考えることなど、できるはずもない。
「二人とも今すぐに熱を下げますから……!」
凰神偉に小黄を預かってもらい、慌てて凰黎が二人の背後に屈みこむ。両手を背に当て冷気を送り始めたそのときだ。
「ここは小鳳の叔父に任せて貰おうか――」
小鳳、の言葉だけで凰黎と煬鳳はそれが誰であるのか瞬時に察した。
しかし、まさか彼が?という思いも鎌首をもたげている。
驚く凰黎にその人物は「よいか?」と尋ねると、慌てて凰黎はその場を彼のために開けたのだ。
「魔界の皇帝陛下、ようやく来てくださったのですね……!」
やっぱり陸叔公だった。
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