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「その通りだ。そして、もしも関係があるとしたら――黒炎山の活動に合わせて二人の翳炎の力が影響を受けているのではないか。つまり、黒炎山はいま、火山が活発化しているのではないかということだ」
凰黎は振り返ると煬鳳に問いかける。
「煬鳳。黒炎山に住んでいたのは、今この場所には貴方しかいません。……あの場所がもとは何という名前であったのか、思い出せませんか?」
「ええっ、ううん……そうは言っても子供だったからな……」
煬鳳は必死で子供のころの記憶を手繰り寄せようと試みた。
(ええと……確か、鋼劍の村でそれっぽいのが書いてありそうな場所は……)
かつての村人たちの様子を一つ一つ思い返す。彼らは鍛冶を生業にしていたため、火山の熱を利用していたはずだ。
「ええと……なにかあったかな……。あっ! そういえば」
「思い出せましたか?」
煬鳳の手を凰黎が握っている。凰黎も煬鳳に関わることだけに必死なのだ。
「えっと、まだ全然。でも、確か村の人たちがこの山は神様が眠っているからって言って、なにか祀っていたんだよ。……あれはなんだったかな……。長老はいつも欠かさずにそこでお祈りをしてたんだ。ええと……」
なにぶん煬鳳が五つか六つのころなのだ。凰黎ならともかくとして、当時の煬鳳はまだ文字が読めなかったのだ。
『……火龍廟』
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