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煬鳳の肩に乗っていた黒曜がおもむろに口を開いた。みなその言葉に愕然として、そしてもう一度黒曜を見る。
『煬鳳は子供だったから文字なんか読めなかっただろうが、俺は読めたからな。……ただ、いまのいままでそれが何なのか考えたこともなかったし、忘れていた。……しかし、龍に関係があることは分かったが、山の名前までは俺もさすが分からない』
「いえ、それだけでも十分すぎるほどの収穫です。感謝します、黒曜」
安心したわけではないのだろうが、それでも一歩前進したことに凰黎は表情を緩ませた。
「根を詰めすぎてはいけない。果報は寝て待てと、そう言うであろう?」
そう言ったのは拝陸天だ。しかし、寝て待ってやってくる果報と来ない果報というものが世の中にはあるだろう。
「陸叔公……いくらなんでも、黒炎山の名前は待ってても出てくるわけがないよ」
さすがそれは無理があると、煬鳳は拝陸天を窘める。拝陸天は煬鳳の言葉にも笑顔を崩さない。
「そうでもないぞ? 実は私は、魔界の皇帝だ。この先に起こることが少しわかる。……凰神偉ほどの人物ならば、既に誰か黒炎山の名前について調べに行かせているのではないか?」
「……その通りです。先ほどすぐに恒凰宮の記録を調べに行かせました」
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