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「大変だ! 彩藍方に……今すぐ彩鉱門に知らせなきゃ!」
彩藍方は兄弟子を送り届けるために彩鉱門へ戻ったのだ。慌てて煬鳳は恒凰宮の外に出ようと立ち上がったが、すぐ鸞快子に止められた。
「待ちなさい。いま君が急いで行ったところで、事態が好転するというわけでもない」
「だからって、彩鉱門にこのことを知らせないつもりか!」
煬鳳は思わず鸞快子に掴みかかる。
「地震は今しがた起きたばかりなんだぞ! みなに報せて、逃げないと……!」
彩藍方は黒炎山での日々を共に過ごした仲であり、あの噴火の中で唯一生き残った大切な友人だ。地震だけならいざ知らず、それが睡龍の目覚めに関係しているというのなら、いち早く知らせる必要があるはず。
黒炎山の噴火のとき、幼かった煬鳳は鋼劍の人々を助けてやることができなかった。
同じ後悔を再び繰り返すわけにはいかないのだ。
そんな煬鳳を見かねたのか凰黎がなにかを言おうとしかけたが、鸞快子は「任せて欲しい」とそれを止めた。
鸞快子は煬鳳に向き直り、穏やかな口調で諭す。
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