109人が本棚に入れています
本棚に追加
「落ち着きなさい。君にはやらなければならないことがあるのではないか? 何のために煬六郎殿が多忙の中を縫ってまで人界へやってきたと思っているのだ?」
「でも、藍方は俺の幼馴染みなんだ! 見捨てろっていうのか!?」
「……そうではない。彼だって彩鉱門の二公子だ。それに、噴火の折にも彩鉱門は黒炎山で暮らしていた。彼らも黒炎山に異常を感じたらすぐに気づくはずだ」
鸞快子の主張は正しい。拝陸天は魔界で混乱の渦中にある国を建て直す役目を負っている。にもかかわらず……煬鳳のためにこうしてできる限り早く煬鳳の元へ来てくれたのだ。
しかも、本来は不可侵の睡龍に魔界の皇帝が来ることは、要らぬ軋轢を生みかねない。そんな中においても拝陸天は甥である煬鳳のため己の身分を隠してまで、恒凰宮を訪ねてきた。
「でも……」
しかし、煬鳳はそれでも心配だった。なにせ地震の源は、かつて封印されし睡龍本体なのだ。しかも、地震の直後に大地は枯れ果て鉱山の人々は骨と皮だけの状態になって死んでしまった。睡龍――火龍の力はそれほどに強大なもの。
心配がないわけがない。
「煬殿」
最初のコメントを投稿しよう!